自己破産をすると車のローンはどうなるの?
「自己破産」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるでしょうか。
自宅や家財道具に「差押」と書かれた紙が貼られ、破産者は何も持たずに路上に放り出され無一文に…というイメージがあるかもしれませんが、実際にはそのようなことはありません。
しかし、「自己破産をすると自分が持っている財産が没収される」という範囲では、上記イメージはあながち間違いではありません。
破産手続においては、今後の生活に必要な最低限の財産を残し、申立人が持っている不動産、預貯金、生命保険又は高価な貴金属などは、お金に換えて、債権者への支払に充てなければなければならないことがあります。
では、自動車はどうでしょうか。
都市部以外では、自動車は生活に欠かせないものであり、破産したら自動車を手放さなけれならないとすると、生活にも支障が生じます。
この記事では、自己破産をした場合に車を残しておけるかどうかについて説明します。
このコラムの目次
1.自己破産と財産
自己破産とは、借金が払えなくなったとき、裁判所に申立をして、今持っている財産はお金に換えて債権者にできる限り返済し、それでも残った借金がある場合これを免除してもらう(免責)手続です。
では具体的にはどのような財産をお金に換えるかというと、おおむね、次のような財産はお金に換える必要がある場合が多いです。。
- 預貯金(普通預金だけでなく、定期預金なども含む)
- 社内積立
- 自宅(建物/土地)やその他所有している不動産
- 生命保険や火災保険(解約返戻金のある保険)
- 貴金属などの高価な品物
- 相続財産
- 退職金
- 車(普通自動車、軽自動車、バイクなどすべての自動車)
さらに、一定額以上の現金も債権者への返済に充てる必要があります。
一方で、家財道具や日常品などは、よほど高価なものでない限り、お金に換える必要はなく破産してもそのまま残しておけます。
2.自己破産における車の扱い
自己破産における車の扱いについて、もう少し詳しくみていきましょう。
(1) ローンが残っている車
ローンで購入し、まだローンを支払っている車の場合、その車の所有権はローン会社のもとにある可能性が高いです。
破産する場合、全ての借金の支払を停止する必要があります。これは車のローンであっても同じです。
そして、通常ローン会社は、ローンの支払が停止したら、所有権に基づき車を引きあげて換価します(それを残ローンに充てます)。
よって、ローンが残っている車を持ったまま破産するとなると、車は残しておけないことが多いです。
一方で、車を一括支払いで購入したケースなど、すでにローンを払い終わっている場合は、ローン会社は既に所有権を失ってますから、車がローン会社によって引き上げられることはありません。
(2) ローンが残っていない車
ローンが残っていない車であっても、一定以上の価値が認められる車については、破産するにあたりお金に換えて、債権者への返済に充てなければなりません。
具体的には、売却価格が20万円以上の車はお金に換えなければならないというのが原則です。
ただし、この基準は、裁判所ごとに少し異なることがありますので、ご注意ください。
例えば、普段使っている車が自分名義ではなく配偶者名義のものだった場合、自動車は債務者の財産ではなく配偶者の財産として扱われますので、そのまま残しておけます。自己破産はあくまでも個人の手続であり家族は関係ないからです。
もっとも、だからといって自分の車を配偶者に名義変更したりすると、悪質な財産隠しの一種として借金が免除されないこともありますので、絶対にやめましょう。
3.車を残しておく手段
ここまで述べたのが原則的な考え方ですが、そうはいっても、車は生活に必要なのでぜひ残しておきたいという場合もあるでしょう。
そのような場合に車を残しておける可能性がある手段を紹介します。
(1) ローンが残っている車
ローンが残っている車を残しておくためには、ローンをなくす必要があります。
具体的には、以下の方法があります。
① 自動車ローンを完済する
ローンをすべて支払い終われば、買主に車の所有権がうつるので、個人再生をしても手元に車を残すことができます。
もっとも、車を残しておきたいからといって、それまで分割で払っていた車のローンを突然一括返済するというのは、破産手続上認められていません。
ただ、車のローンがあと数カ月で払い終わるという場合などは、その間だけ何とか頑張ってそれまでと同じように支払いを続けて車のローンを完済し(ただしその間はほかの借金も支払う必要があります)、その後に弁護士に依頼して破産手続に着手するという形をとれば、車を残しておけます。
② 第三者にローンを返済してもらう
親族や友人知人を頼って、自分の代わりに車の残ローンを支払ってもらう方法です(ただし、同居の親族からの支払などの場合は、裁判所から問題視される可能性があります。)。
やり方は二つあり、一つは、単純に第三者に残ローン全てを一括で払ってもらうという方法です。この場合、支払を行う第三者にはかなりの金額を準備してもらう必要があります。
もう一つは、債権者の同意を得て第三者がローンを引き継ぐという方法です。ただし、こういった処理には応じてくれない債権者もいます。
(2) ローンが残っていない車
ローンが残っていなくても、20万円以上の価値のある車は換価の必要があります。
もっとも、破産手続の場合、裁判所に申立をすることで、一定の要件のもとで20万円以上の価値のある車であっても残しておくことができます。
これを、「自由財産の拡張」といいます。
ただし、具体的にどのような条件のもと自由財産の拡張が認められるかは、裁判所ごとに運用が異なりますので、具体的には相談時にお尋ねください。
(3) それ以外の方法
これらの方法はいずれも困難だけど、車を残しておきたい場合は、自己破産ではなく個人再生や任意整理も視野に入れてみましょう。
任意整理手続というのは、弁護士が債権者と交渉して利息を免除してもらい、元金を分割払いするという合意をすることで、借金の返済の負担を減らす手続です。
任意整理の場合、整理の対象とする債権者を選ぶことができます。
そのため、自動車ローンを対象から外して整理を行うことで、自動車ローンの支払を継続し、車を残しておくことができます。
個人再生というのは、裁判所に申立をして借金を減額してもらい、分割払いするという手続です。破産手続と違って財産をお金に換える必要はありません。
そのため、車はあるけれどローンの支払は終わっているケースであれば、車はそのまま残しておけます。
4.車を残したいなら弁護士へご相談を
自己破産の手続は非常に複雑で、法的知識を持っていない方が自力で手続を進めるのは困難です。「車を残したい」という特別な希望があるのなら尚更でしょう。
自己破産の際に残しておける財産の基準や運用は、裁判所によって大きく違います。
自己破産を検討するのであれば、地元の裁判所の運用に詳しい弁護士に相談、依頼するのが確実です。
また、法律の専門家である弁護士と一緒に借金や財産の状況を整理・検討すると、自己破産しなくても別の方法で生活を立て直せる方法が見つかることもあります。
借金でお困りの方や自己破産を検討している方は、ぜひ一度、泉総合法律事務所の弁護士へご相談ください。できる限り希望に添った形で借金の整理を行えるよう、最善のアドバイスをさせていただきます。
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