不倫慰謝料

不倫慰謝料の相場はいくら?

配偶者の浮気・不倫が発覚したとき、「離婚時に慰謝料を請求したい」「不倫相手からせめて慰謝料だけでも取りたい」と考える方は少なくないでしょう。

では、不倫についての慰謝料は具体的にどの程度の金額を請求できるのでしょうか。また、どのような事情があれば慰謝額が増減するのでしょうか。

実際にいくらになるかは個別の事案によりますが、ご自分のケースでどうなるか、本記事を是非参考にしてください。

1.不倫慰謝料とは

最初に、不倫慰謝料の概要を簡単に解説しておきます。

不倫は、肉体関係があれば原則として民法で規定される「不貞行為」にあたります(民法770条1項1号)。
そして、この不貞行為によって夫婦間の平穏な婚姻関係が破綻した場合には、「不法行為」として、不倫によって受けた精神的損害の賠償として慰謝料を請求できるとされています(民法709条、710条)。

不倫は配偶者と不倫相手の両者がいて初めて成立するものですから、慰謝料は配偶者と不倫相手のどちらに請求しても構いません(民法719条1項)。

ただし、例えば慰謝料額が300万円なら、受け取れるのは双方から合計して300万円までです。双方から300万円ずつ、合計600万円受け取れるわけではありません。

2.一般的な不倫慰謝料の相場

冒頭でもご説明しましたが、慰謝料の金額については法律で定められているわけではありません。

慰謝料が損害賠償の性質である以上、その金額は損害の大きさによって変わり、法律で区分することはできないからです。

とはいえ、これまでの裁判例の蓄積により、ある程度パターンごとの相場が形成されています。

不倫であれば、概ね次のような相場になっています。

夫婦が別居・離婚する場合

100~300万円

夫婦が共同生活を続ける場合

50~100万円

後述する「慰謝料が増減する要素」によっては300万円を超える場合もありますが、そこまで高額になるのは稀なケースだと理解しておいてください。

【離婚訴訟の統計】
上記の相場は、東京家庭裁判所での離婚訴訟の判決にも表れています(「離婚訴訟における離婚慰謝料の動向」神野泰一 ケース研究322号26頁以下)。
2012年4月~2013年12月の期間中、東京家庭裁判所で不貞行為について判決に至った離婚訴訟は44件です。このうち29件が請求認容され、平均認容額は223万円でした。また、300万円を超えた事件は4件だけです。
これは離婚訴訟で判決に至った事件の統計で、和解や調停の件数・金額は含まれていませんが、基本的には300万円以下の範囲内が不貞行為の慰謝料相場と言えます。

3.慰謝料額が増減する要素

そもそも、不倫慰謝料は不倫をされた被害者の精神的損害を賠償するものですので、慰謝料額は精神的損害の大きさ・程度によって判断されます。

そうは言っても、苦痛の程度は人によって様々で、簡単に金額で表せるものではありません。

そのため、裁判所では様々な要素を考慮しながら総合的に判断しています。

(1) 増減の具体的な要素

例えば、以下のような点で慰謝料額が増減します。

不貞行為の回数、期間

一般に、一回限りの肉体関係より、継続的な関係のほうが慰謝料は高額になりやすいです。

婚姻期間

夫婦の婚姻期間が長いほど高額になりやすいです。特に10年を超えていると増額される傾向にあります。

不倫前の夫婦関係

関係性が良好であるほど高額になりやすいです。

逆に、不倫前に既に関係性が破綻していた場合、慰謝料請求が認められないことがあります。

子供の有無、年齢

幼い子供がいると高額になることが多いです。

ただし、成人した子供は基本的には考慮されません。

年齢、職業、収入

他の要素と比べると影響は小さいですが、相手の社会的地位が高いほど高額の慰謝料が認められやすくなります。

反省、謝罪、発覚後の不倫継続

当事者に反省の色が見えなかったり、発覚後も継続して不倫していると高額になりやすいです。

この表のもの以外でも、例えば、精神的苦痛を受けたことでうつ病になったり、相手方が既に社会的制裁を受けていたり、様々な要素が考慮されます。

(2) 不倫慰謝料の裁判例

ケース① 東京地判平成25年7月16日(平成24年(ワ)第33586号)
請求:妻から不倫相手
認容額:100万円+弁護士費用10万円
不貞期間:約1年
子供:7歳以下1人(不貞開始時)

不倫をした夫は不倫相手と同居し、さらに夫側から離婚調停が申し立てられていましたが不成立になり、離婚訴訟も提起されていないことから、やや低めの慰謝料請求が認容されました。

ケース② 東京地判平成24年10月25日(平成23年(ワ)第35073号)
請求:妻から不倫相手
認容額:300万円+弁護士費用30万円
不貞期間:約2年
子供:15歳以下2人(不貞開始時)

婚姻期間が16年以上の夫婦の事案です。これも不倫をした夫側から調停が申し立てられましたが、不成立になり、不貞開始から約2年で夫婦が別居するに至りました。

判決時点では法律上の婚姻は継続しているものの、不貞行為によって婚姻関係が破綻したこと、子供が2人いること、婚姻期間が長いことなどから、300万円が認容されました。

ケース③ 東京地判平成25年8月22日(平成24年(ワ)第10069号)
請求:夫から不倫相手
認容額:400万円
不貞期間:1年以上
子供:なし

不貞行為までの婚姻期間は約1年と長くはありませんが、妻が不倫相手の子を2度妊娠し人工中絶手術を受けていた事案です。

夫が精神的苦痛により抑うつ状態・睡眠障害となったこと、夫のキャリアにも影響を与えたこと、不倫相手の夫への対応等により、比較的高額な400万円が認容されました。

4.不倫慰謝料でお困りの際は弁護士へ

ご説明してきたように、一言で「慰謝料」といっても様々な要素が影響してきます。

ご自分で請求される際も、とにかく高額を請求しておけばいいというものではありません。かえって相手の態度を硬化させてしまったり、本来は内容証明郵便での請求で済むものが訴訟しなければならなくなったりする可能性もあります。

そのため、ご自分の状況でいくら請求できるのか、どれくらいの請求なら払ってもらえそうなのか、どの程度が相場なのかを弁護士に一度ご相談されることをおすすめします。

泉総合法律事務所では、数多くの離婚問題を解決してきた実績があります。
まずはお気軽に、当事務所の無料相談をご相談ください。

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