刑事事件

家族が強制わいせつ罪で逮捕された場合にできること

家族が強制わいせつ罪で逮捕されてしまったら、家族としてはどうしたらよいのか、不安に駆られることでしょう。ご家族の方の心痛は当然のことです。

では、家族として何ができるのでしょうか。

以下においては、強制わいせつ罪はどのような犯罪か、強制わいせつ罪で逮捕・勾留された場合の流れ、逮捕・勾留された家族のためにできることなどについて、説明することとします。

1.強制わいせつ罪はどのような犯罪か

強制わいせつ罪は、13歳以上の者に対しては暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為すること、13歳未満の者に対しては単にわいせつな行為をすることによって成立します(刑法176条)。
6月以上10年以下の懲役が科せられます。未遂も処罰されます(刑法179条)。

陰部に手を触れたり、手指で弄んだり、自己の陰部を押し当てること、乳房を弄ぶこと、相手の意思に反して接吻を行うことは通常これに当たります。
また、相手の意思に反して、着衣の中に手を差し入れて直接人の体に触る行為(悪質な痴漢)も、強制わいせつ罪に該当するのが一般的です。

2.強制わいせつ罪で逮捕・勾留された場合の流れ

(1) 逮捕・勾留・起訴・判決までの流れ

①逮捕

被疑者は、逮捕されますと、警察での取調べを受けます。通常は、逮捕から48時間以内に検察官に送致されます(刑事訴訟法203条)。

そして、検察官は、事件の内容や証拠関係を検討するとともに、被疑者の身体の拘束を継続する必要があるかどうかを検討します。

その結果、直ちに被疑者を起訴することができるのであれば起訴しますが、被疑者を取り調べるなどして、被疑者を拘束したまま更に捜査を行う必要があると判断した場合は、被疑者を受け取ってから24時間以内、かつ、逮捕から72時間以内に、裁判官に勾留の請求をします。

検察官は、勾留請求も起訴もしないのであれば、直ちに被疑者を釈放しなければなりません(205条)。

②勾留

裁判官は、検察官の勾留請求を受け、勾留質問を行って、その当否を審査しますが、被疑者が、罪を犯した疑いがあり、住居不定、罪証隠滅のおそれ又は逃亡のおそれのいずれかに当たり、勾留の必要性があると判断した場合、10日間の拘束を認める勾留決定をします(刑事訴訟法207条1項、60条1項、61条)。

平成30年版犯罪白書(平成29年統計※)では、強制わいせつ罪(強制わいせつ致死傷及び監護者わいせつの両罪も含みます)の場合、勾留請求率は96.2%、勾留認容率は94.0%となっています。

検察官は、原則として、この10日間で起訴・不起訴の判断をしなければなりませんが、やむを得ない事情がある場合は10日を上限として勾留の延長を裁判官に請求することができ、裁判官は、請求に理由があれば10日を上限として勾留の延長を決定することができます(刑事訴訟法208条2項)。

このようにして、最長で合計20日間の勾留が認められますが、それ以上の延長は許されておらず、検察官は、この期間内に起訴を行わない場合、直ちに被疑者を釈放しなければなりません(刑事訴訟法208条)。

特段の前科がなく、犯行を認めていて、犯行態様が悪質でなく、示談が成立し、被害者の処罰感情が緩和している場合は「起訴猶予」、わいせつ行為に被害者の承諾の可能性があるとか、犯行を裏付ける証拠が不十分であるなどの場合は「嫌疑不十分」として、起訴が見送られ、不起訴となる可能性が高いものと思われます。

もちろん、強制わいせつ罪は非親告罪ですので、示談が成立し告訴が取り下げられたからといって、そのことだけで不起訴になるとは限りません。

※第2編第2章第2節の2-2-2-1表 検察庁既済事件の身柄状況(罪名別)

③起訴

被疑者が起訴されますと、被告人という立場に変わります。
起訴前に勾留されていれば、被告人となっても自動的に勾留が継続します。これを被告人勾留と言います。

被告人の勾留の期間は、起訴の日から2か月間ということになり、必要に応じて、1か月ごとに更新されることになります(刑事訴訟法60条2項)。

なお、起訴後は保釈が認められますので、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがないと判断されれば、保釈金と引き換えに釈放されることになります。

④判決

裁判では、無罪・有罪の判決が下されます。

平成29年の「強制性交等罪・強制わいせつ罪※」の執行猶予率は56.6%です。
6月以上3年以下の懲役刑の判決を受けた場合に限ると、執行猶予率は74.7%となります。

ただし、上記の数字は法定刑の重い強制性交等罪を含むものですから、強制わいせつ罪では、より執行猶予率が高くなると推測されます。

※ 平成30年版犯罪白書の第2編第3章第2節2「2-3-2-3表」通常第一審における有期刑(懲役・禁錮)科刑状況

(2) 在宅事件の場合

在宅事件の場合、一般的には、事件から1か月~数か月が経過した後、警察あるいは検察庁から呼び出しがあり、取り調べが行われます。

しかし、身柄事件か在宅事件かによって、検察官の処分や判決結果に影響があるわけではなく、被疑者に罪証隠滅や逃亡のおそれがある場合に、その身体を拘束しておく必要が生じるにすぎません。

3.逮捕・勾留された家族のためにできること

(1)  面会等

逮捕中は、家族でも、面会することはできません。面会できるのは弁護士のみです。

勾留中は、接見(面会のこと)禁止等の決定(207条1項、81条)がなされていなければ、家族も被疑者と面会し、着替え、書籍、現金などを差し入れることができます(刑事訴訟法207条1項、80条)が、いろいろな制限がありますので、いつでも自由に面会等ができるわけではありません。

例えば、家族が面会できるのは平日の昼休みを除いた時間帯(通常、9時から12時、13時から16時。警察署によって異なります。)で、1日1回20~30分程度、警官の立ち会いのもとです。
会話内容は立ち会いの警官に記録されますし、事件の内容についての会話は禁止されています。

また、当日の面会希望者の混み具合などによって、時間を10分程度に制限される場合や面会できない場合もあります。

他方、弁護士には、これらの制限は一切ありません。土日祝日、夜間でも、警官の立ち会いもなく、時間制限もなく面会することができます。

被疑者は、今後どうなるのかと不安に駆られ、いろいろと相談したいはずですので、そのためには、弁護士に依頼するのが望ましいことになります。 

(2) 弁護士への相談・依頼

家族が逮捕されたら、すぐに弁護士に相談・依頼することです。

では、弁護士にはどのようなことが期待できるのでしょうか。

①事件の見込みや被疑者の状況が分かる

弁護士から、身柄・在宅の見通しや起訴・不起訴の見込み、今後の法的手続の予定、起訴された場合の判決の見込みなどを聞くことができます。

また、被疑者が逮捕され、ご家族が直接被疑者に会えない場合でも、弁護士であれば、ご家族からの伝言を被疑者にお伝えすることもできますし、接見後に被疑者が今どのような状況に置かれているかをご家族にお伝えすることもできます。

このように、弁護士に依頼することで、ご家族が事件とどのように向き合っていけば良いかの心構えや今後に向けての準備ができるようになります。

②取調べに対するアドバイス

弁護士は、早期に、被疑者と面会し、取調べを受けるに当たっての必要なアドバイスをします。

③釈放のための働きかけ

逮捕中の場合、検察官に面談を求め、被疑者の「出頭誓約書」、家族の身元引受書や弁護士の意見書を提出して、勾留請求をしないように働きかけます。

また、勾留請求がなされた場合には、担当裁判官に面談を求め、上記各書面を提出して、勾留の理由や必要性がないことを訴え、勾留決定をしないように働きかけます。

さらに、起訴された場合には、保釈の請求(刑事訴訟法88条1項)をした上、担当裁判官に面談を求め、その面談を通じて、保証金額の希望を伝えたり、望ましい制限住居、適切な身元引受人の存在などを訴え、権利保釈(89条)あるいは裁量保釈(90条)の判断材料を提供して、保釈の必要性を主張したりします。

④勾留決定や保釈却下決定に対する準抗告

勾留決定や保釈却下決定がなされた場合には、その取消しを求めて、準抗告を申し立てます(刑事訴訟法429条1項2号)。

⑤被害者との示談

強制わいせつ罪は親告罪でなくなりましたので、告訴がなくても、あるいは、告訴が取り下げられたとしても、検察官は起訴することができます。

しかし、被害者と示談が成立し、被害者の処罰感情が緩和されたと評価される場合には、逮捕・勾留を免れる可能性が高まるだけでなく、事件自体も不起訴で終わることが十分期待できます。

そして、そのことは、起訴後の公判段階でもいえることで、示談が成立し、被害者の処罰感情が緩和されたと評価されれば、執行猶予となる可能性も出てきますし、実刑であっても刑期が軽減されることにつながっているのです。

したがって、処分が軽くなるか否かは、いかに早期に示談を成立させることができるかにかかっているわけです。

被疑者やその家族は、通常、被害者の連絡先を知りませんし、警察や検察官も、被害者の連絡先や氏名を教えてくれることはありません。
しかし、弁護士限りということであれば、警察や検察官も、被害者の連絡先や氏名を開示してくれる可能性があります。

その開示が得られれば、弁護士は、被害者との示談交渉に当たります。

被害者が未成年の場合には、示談交渉の相手は被害者の保護者である両親ということになります。
弁護士は、未成年である被害者の心情にも最大限配慮して、示談交渉に当たります。

示談交渉では、被疑者の真摯な反省と誠意ある謝罪の気持ちを、被害者(被害者が未成年の場合はその保護者。以下「被害者側」ともいいます)に受け入れてもらう必要があります。

これらを受け入れてもらえれば、被害者の処罰感情が緩和し、被害者側との示談も成立する可能性が高くなります。

示談が早ければ早いほど、強制わいせつ罪を犯した被疑者に有利な処分結果が出ることが期待できますので、もし逮捕された場合には、逮捕された直後の早い段階で、弁護士に依頼するようにしましょう。

4.まとめ

性犯罪に対する社会一般の評価から、強制わいせつ罪についても厳しい非難は免れませんが、弁護士に依頼することにより、示談の成立が早ければ早いほど、被疑者に有利な処分がなされる可能性があります。

泉総合法律事務所は、刑事弁護の経験が豊富で、示談交渉の実績も多数あります。
強制わいせつ罪を犯してしまった、逮捕されてしまったという被疑者のご家族は、泉総合法律事務所新宿支店に是非ご相談・ご依頼ください。

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