債務整理

個人再生委員って何をする人?対応するときの注意点

東京地方裁判所で個人再生を行うと、裁判所から「個人再生委員」という人が選任されます。

個人再生委員は、個人再生の手続において様々な役割を担っていますが、具体的にどのようなことを行うのかご存知でしょうか?

個人再生委員とははたして何をする人なのでしょうか?
また、個人再生委員とは面接があるのですが、そこでは一体何を聞かれるのでしょうか?

個人再生を成功に導くためには、個人再生委員について知っておくことも大切です。
この記事では個人再生委員の概要や、対応をするうえでの注意点をお伝えしていきます。

1.個人再生委員とは?

個人再生では「再生計画」と呼ばれる、平たく言えば借金の返済計画を作成しなければなりません。

再生計画は本来申立人が作成するのですが、その際に債務者が不正を考えないとも限りません。
また、ただでさえ個人再生手続は複雑です。

そこで、個人再生委員の登場となります。

申立人の指導監督を行い、裁判所に意見を述べる役割を担うのが個人再生委員の役割です。

東京地方裁判所の場合、個人再生委員は管轄する地域に所属する経験豊かな弁護士の中から選任されます。
個人再生委員は申立人の面談を皮切りに、個人再生手続の要所で関わってきます。

もし申立人の対応に問題があれば、個人再生委員は容赦なくそのことを裁判所に報告し、意見を述べるかもしれません。

そして裁判所は個人再生委員の意見を重要視します。
申立人にとって不利益になる意見があれば、個人再生そのものがうまくいかずに、再生計画の認可が下りない、つまり借金の減額がされないおそれもあるのです。

(1) 個人再生委員の役割

具体的には、以下の役割を担います。
それぞれについての詳細と対応方法は後述します。

  1. 面談
    個人再生委員の選任後、個人再生委員と申立人の間で速やかに行われます。ここでは、申立人が個人再生の要件を満たしているか等を確認します。
  2. 申立人の財産や収入状況の調査
    これらを正確に調査し、個人再生手続開始の判断や再生計画案のチェック等に活かします。
  3. 再生計画案に関する指摘やアドバイス
    申立人や申立人の弁護士が作成した再生計画案を確認します。
    必要に応じて指摘やアドバイスを行い、さらには補正を求めることもあります。
  4. 履行テストの実施
    東京地方裁判所では、申立人に対して「履行テスト」というものが行われています。
    一定期間指定日に個人再生委員の指定する口座に一定額のお金(通常は、再生計画が認可されたら月々返済していくことになる金額とほぼ同額)を振り込むのがテストの内容です。再生計画が認められた後の返済能力が本当にあるかをチェックするためにこういったテストが実施されています。
    振り込んだお金は個人再生委員への報酬分を差し引いて返還されます。
  5. 裁判所に意見を述べる
    個人再生委員は、面談や調査、履行テストの結果を参考にして、「再生手続開始決定」や「再生計画の認可」等について裁判所に意見書を提出します。
    裁判所はこれを参考にして開始決定や認可を検討するので、個人再生委員の意見書は個人再生の成否を左右する重要なものとなります。

(2) 個人再生委員が選任されるケース

個人再生委員を選任するかどうかは、個人再生を行う裁判所が任意に決めることができます。

弁護士が代理人となっている場合は、個人再生委員を基本的に選任しない裁判所も多いようです。
ただし、弁護士がいても債権額が大きい場合は個人再生委員が選ばれることがありますし、その他何らかの事情があって選任されることもあります。

そして気になる東京地方裁判所の場合ですが、全案件で個人再生委員が選任されることになっています。

東京地方裁判所に個人再生を申立てる人は、個人再生委員への報酬や対応が必要なことを覚えておいてください。

(3) 個人再生委員に支払う費用

東京地方裁判所の場合、弁護士に個人再生を依頼しているかどうかで金額が大きく変わります。

  • 弁護士に依頼している場合:原則15万円~
  • 弁護士に依頼していない場合:原則25万円~

上記はあくまで最低額なので、さらに増える可能性があります。
弁護士に依頼すると安くなるのは、弁護士がいると適正な書類や対応が期待できるため、個人再生委員の負担が減り、人件費が軽減されるからです。

2.個人再生委員への対応

ここからは個人再生手続の流れに沿って、個人再生委員にはどのような対応をすればいいかの注意点等を述べていきます。

(1) 個人再生の申立てと個人再生委員の選任

個人再生を東京地裁に申込むと、早ければ即日個人再生委員が選任されます。

(2) 個人再生委員と面談

個人再生の申立てからすぐ(1週間程度)に、個人再生委員との面談が行われます。

個人再生委員は個人再生の申立てから3週間以内に個人再生手続を開始するかどうかを判断し、裁判所に意見書を提出しなければなりません。
そのため、面談は申立てからあまり間を空けずに実施されるのです。

面談は基本的に個人再生委員の事務所で30分~1時間程度かけて行われ、申立人と申立人の代理人弁護士が出席します。代理人弁護士がいない場合は申立人のみが出席します。

面談では既に提出してある申立書の記載に基づいて、債務の額や資産と家計の状況等をチェックされます。

もし債務額が5,000万円を超えている等で個人再生の条件を満たしていない場合は、他の債務整理を行うように言われる可能性があります。

なお、面談に際しては以下の2つに気をつけてください。

  • 正直に答える
  • 書類の不備がないようにする

面談では借金の経緯や今後の返済への考え等についても質問されます。内容に嘘があったり間違いがあったりすると個人再生委員への心証が悪くなるので、聞かれたことには正直にはっきりと答えてください。

また、申立ての際に提出する書類に不備がないよう努めましょう。
個人再生委員は2週間程度の期間内に申立人の書類を確認し、借金や収入の状況を調査します。提出した書類に不備があると、修正を求められて手続が遅れてしまいます。

弁護士に同席してもらえば面談中も横からアドバイスをしてもらえるので、不安なことがあったら弁護士を頼れば問題ありません。

なお、面談では家計簿の提出等追加書類を求められることもあるので、それらにもしっかり対応することが大切です。

(3) 履行テスト

東京地裁では、個人再生が認められた後に申立人がしっかりと弁済していけるのかを判断するために「履行テスト」というものが行われています。

履行テストは原則6ヶ月行われ、個人再生委員が指定した口座に毎月一定額を振り込まなければなりません。
振り込む額は再生計画認可後に支払うことになる1ヶ月の弁済額と同じです。

1回目は個人再生委員との打ち合わせ前に振り込むスケジュールになることもありますが、それ以降は1ヶ月ごとに一定額を振り込むことになります。

履行テストの注意点は、なんと言っても「指定期日までに指定された額を必ず振り込む」ということです。
入金が遅くなる、または金額が足りない等すると、個人再生を認めてもらえない可能性が高くなります。

(4) 個人再生手続開始決定

個人再生委員は面談や履行テストの結果を鑑みて、裁判所に意見書を提出します。

裁判所はその意見書を見て個人再生手続開始の可否を判断します。

(5) 債権調査や報告書の提出

個人再生の手続が始まると、裁判所は各債権者に開始決定書等を送付します。
このとき同時に、指定期間内に債権を届出するようにも通知します。

裁判所はその後、債権者が届け出た書類に基づいた債権が記載してある「債権届出書」を申立人や代理人弁護士に送付します。

申立人と弁護士は期日までに債権届出書にある債権を認めるか認めないか判断し、異議がある場合は期間内に裁判所へ異議を申し立てなければなりません。

このときの注意点としては、期間中にやるべきことをするということです。
債権を認めるのであればその旨を、異議があるならその旨を明らかにして裁判所に書類を提出しなければなりません。

もちろん、書類に不備や虚偽がないようにも注意してください。

(6) 再生計画案の作成と提出

債権が確定したら、申立人(弁護士がいれば弁護士と協力しながら)は再生計画案を作成しなければなりません。
また、再生計画に基づいた返済計画書の作成も必要です。

完成したら期日までに裁判所と個人再生委員に提出してください。
期日に遅れると再生手続が廃止され、個人再生は失敗に終わってしまいます。

従ってこのときは、しっかりとした再生計画案と返済計画表を作り、期限内に提出することが最重要となります。

(7) 再生計画の認可決定(または不認可決定)

その後、個人再生委員からの意見書等を参考にして裁判所が再生計画の認可または不認可を決定します。
無事に再生計画が認可されれば個人再生手続は終わりです。

官報に個人再生を認められた旨が掲載され、そこから2週間で認可が確定します。

以降は再生計画に基づいて月々の弁済が始まります。しっかりと再生計画に則った弁済を続けることが大切です。

3.個人再生委員への対応も弁護士がサポート可能!

個人再生委員には誠実かつ正直に対応し、決められた書類を決められた期間内に提出することが大切です。
しかし個人再生の書類は何かと作成が難しく、一般人が自力で調べながら作ると時間がかかりますし、ミスも多くなってしまいます。

個人再生は弁護士に依頼するのが確実です。弁護士は書類を正確かつ迅速に作成し、期限内に提出するためにサポートをしてくれます。

熟練した弁護士がいれば、無事に個人再生が認められることがほとんどです。個人再生をお考えの方は、ぜひ、経験豊富な泉総合法律事務所の弁護士にご依頼ください。

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