子どもが個人再生をしたら?親がしてはいけないことや注意点
子どもが借金問題で債務整理をすると聞けば、パニックになってしまう方は少なくないでしょう。
債務整理では、場合によっては、親族、特に親の援助が重要になることがあります。
債務整理手続の中でも、個人再生手続は、親の援助が重要な債務整理手続です。
自己破産のデメリットを回避して大幅な支払負担軽減が出来るなど、様々なメリットがある個人再生手続ですが、以下のようなデメリットもあります。
- 支払負担が残り、かつ、その支払いが出来ると裁判所に認められる必要がある。
- 裁判所を利用するため、様々なルールを守らなければいけない
このデメリットを和らげるには、親の援助が重要になりますが、逆に、親が子どもに誤った対応をしてしまうと、子どもが個人再生手続をすることが出来なくなる恐れがあります。
また、子どもが個人再生をすることで、親に悪影響が及ぶ可能性もあります。
このコラムの目次
1.個人再生手続とは
個人再生手続は、借金など債務を支払いきれない恐れのある債務者が、借金の一部を原則3年(最長5年)で返済する「再生計画」の返済を終えれば、残る借金が免除されるという仕組みの債務整理手続です。
再生計画で支払わなければならない金額は、一般的に用いられる手続では、
- 最低弁済額:借金の額に応じて法律に定められている金額
- 清算価値:自己破産をしたとすれば債権者に配当される債務者の財産の金額
のいずれかより大きいほうの金額に決められます。
また、個人再生手続は、裁判所を用いる公的な手続です。
そのため、借金の減額により損害を受ける債権者は、公平な取り扱いを受けなければならないというルールがあります。
このルールは「債権者平等の原則」と呼ばれ、個人再生手続をする債務者や身近な人間に問題を生じさせることがあるのです。
それでは、子どもが個人再生をした場合に、親が子どもに対してしてはいけないことの具体的な内容、対策や代わりにすべきことを、説明していきましょう。
2.子どもが個人再生をした時に親がしてはいけないこと
(1) 財産を預かったり、名義を変えたりしない
子どもが、手続の中で裁判所から財産を隠すために、
- 貴金属などの金目の物を預かる
- 不動産や、解約返戻金のある保険の名義を親のものにする
- 子どもの預金を親の口座に送金することに協力する
と言ったことは、絶対におやめください。
子どもが個人再生手続することが許されなくなるどころか、親であるあなたも含めて、罪に問われる危険があります。
個人再生手続では、自己破産手続と違って、債務者が持っている高価な財産が裁判所に処分されて債権者に配当されることはありません。
もっとも、その代わりに、先ほど返済額の基準で触れた通り、清算価値、つまり、自己破産での配当予想額以上を、再生計画で返済しなければいけません。
簡単に言えば、債務者が持っている財産が多いほど、個人再生をしても借金が減りにくくなる可能性が高くなるのです。
だからと言って、財産を隠すことで清算価値を減らせば、債権者に損害を与えることになります。
しかも、裁判所をだます非常に悪質な行為です。
そのため、個人再生ができなくなるだけでなく、いわば詐欺罪のような犯罪にもなっています。
子どもから財産隠しに協力を依頼されても、協力せず、そんなことはしないよう説得してください。
なお、隠したのではなく、タダで子どもから親へと財産をあげたとしても、清算価値は減らないことになっています。
裁判所から疑いの目を向けられるだけですから、これもおやめください。
(2) 親子間の借金を隠したり、手続前に返済させたりしない
借金の返済に困っている子供に、お金を貸している方はご注意ください。
親子で借金をしていることを裁判所に申告させないようにして隠すことをしてはいけません。
また、個人再生手続をする前に、もう借金全額を支払えない状態の子供に、親への借金だけを優先的に返済させてもいけないのです。
親子間の借金を隠すことは、債権者平等の原則に違反!
債権者平等の原則があるため、原則として、全ての債権者と借金を裁判所に申告する必要があります。
平等に借金を減額するためです。
子どもに対して「親への借金だけでも約束通り全部支払うようにしなさい」と言って、裁判所に親への借金があることを隠すよう求めないでください。
債権者平等の原則に違反する違法行為をしたとして、子どもが個人再生手続できなくなることがあります。
借金全額を支払えないのに、特定の債権者にだけ優先的に返済することを、「偏頗弁済」と言います。
偏頗弁済は、特定の債権者だけをえこひいきするものですから、まさしく債権者平等の原則に違反するものです。
偏頗弁済があると、その分だけ清算価値がさらに高額になる仕組みになっています。そのため、再生計画上の返済額が増加する恐れがあります。
悪質とされれば、手続を途中で打ち切られることもあります。
親が子どもの借金の保証人となっていれば、個人再生手続により、その借金の残高が、親に対して一括請求されてしまいます。
もちろん、債権者平等の原則がありますから、保証している借金を裁判所に申告させないとか、優先的に返済させてしまうことはできません。
交渉次第では、子どもがそれまで通りに支払っていたように分割払いをすることが出来ないわけではありません。
その場合、子どもも再生計画に基づいて、親が保証していた借金の一部を支払い続けますから、手続時点での保証されていた借金残額の全てを支払うことにはなりません。
いずれにせよ、保証人となっている借金の支払が困難なようであれば、落ち着いて、弁護士に相談し、債権者との交渉や債務整理手続を検討しましょう。
3.子どもが個人再生をした場合にすべき行動
子どもが個人再生手続をする場合には、出来れば、以下のようなことをしてあげましょう。
(1) 費用の援助
弁護士費用や手続費用を援助することで、給料の差し押ささえなどをされる前に、子どもが迅速に手続を申立てることが出来るようになります。
(2) 子どもが支払えない出費の肩代わり
先ほど説明した偏頗弁済は、身近な支払いにも問題が生じます。
- 滞納している家賃の支払い
- 滞納しているスマホや携帯の通信料、スマホ本体の割賦残金の一括払い
- 自動車ローン残額の一括払い
なども偏頗弁済になるおそれがあります。
かといって、上記の支払いをしなければ、アパートから退去させられる・スマホの通信契約を解約される・自動車を引き上げられるなどの問題が生じます
そこで、出来れば親が代わりに支払ってあげましょう。
子ども本人ではない人が支払う「第三者弁済」は、偏頗弁済になりません。
(3) 再生計画に基づく返済への援助
再生計画に基づく返済が出来ると裁判所に認めてもらえなければ、借金は減額されません。
また、再生計画中に支払いができなくなると、借金が復活するおそれがあります。
特に、子どもが、住宅ローンを再生計画に基づく支払いと一緒に支払っている場合は、再生計画に基づく返済が出来るかどうかは、厳しくなってきます。
個人再生手続では、住宅資金特別条項(「住宅ローン特則」とも呼ばれます)という特有の制度により、住宅ローン債権者がローン付きマイホームを処分できないようにしつつ、他の借金を個人再生で減額することが出来ます。
しかし、住宅ローンの支払金額は一切減額されません。
そのため、住宅資金特別条項を利用した場合には、再生計画に基づく支払いができないとされる恐れがより大きくなるのです。
親の家計に余裕があれば、子どもに経済的援助をしてあげましょう。
同居していて家計が同じであれば、当然に親の収入や財産を再生計画に基づく返済が出来るかの判断に組み込んでもらえます。
別居や二世帯住宅で家計が別になっていても、
- 裁判所に、再生計画期間中、援助を継続すると約束する
- 実際に援助できる収入や財産があることの資料を提出する
ことで、裁判所は、親からの援助も含めて、子どもが再生計画に基づく返済が出来るかを判断してくれることがあります。
4.子どもの個人再生は慌てず弁護士に相談を
個人再生手続は裁判所を用いる手続であるため、債権者平等の原則による規制があり、その対策には一般の方には理解しづらい法律問題が絡んできます。
また、再生計画の策定や、住宅資金特別条項の利用などでも、専門的知識が要求される債務整理手続です。
親としては、子どもが個人再生手続をするということになって、非常に驚いてしまうことは仕方が無いことでしょう。
しかし、子どもを心配するあまり、あるいは、怒りのあまりに軽はずみなことをしてしまうと、トラブルの元です。
子どもの代理人となった弁護士の助言を参考に、慌てずに行動し、子どもを見守ってあげてください。
泉総合法律事務所では、個人再生により借金問題を解決した実績が多数ございます。是非ともお気軽にご相談下さい
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